こんにちは!三浦半島のダイビングショップ、三浦海の学校でダイビングインストラクターをしている吉田です。今日は、潜水中に出会った小さな海の宝石「クロヘリアメフラシ」についてお話しします。写真を見ていただくとわかるように、緑色の海藻の上で目立つオレンジ色の体が特徴的な、とても小さな生き物です。
ダイビングをしていると、時々「わっ、なにこれ?」と思わず声を上げたくなるような小さな生き物に出会うことがあります。今回ご紹介するクロヘリアメフラシもそんな魅力的な海の仲間の一つです。
クロヘリアメフラシってどんな生き物?
みなさん、写真の生き物を見てどう感じましたか?小さくて茶色っぽいオレンジ色の体に、白い縁取りがある姿が特徴的です。大きさは2〜3cmほどの小さな生き物で、名前の通り「クロヘリ(黒縁)」が特徴のアメフラシの仲間なんです。
実はこの子、アメフラシの仲間でありながらも、一般的に想像するような大きなアメフラシとは少し違います。アメフラシ類では小型の種で、体長は最大でも6cm程度。ほとんどの個体は2〜3cmほどの小ささなんです。ぼくが最初にクロヘリアメフラシを見たとき、「え?こんな小さいのもアメフラシなの?」と思ったことを覚えています。
名前の由来は、体の側足(そくそく:体の後方のひらひらとした部分)が黒く縁取られていることから。写真の個体は少し色合いが異なって見えますが、典型的なクロヘリアメフラシは側足が赤く縁取りされ、その外側に細い黒い線が走っています。また触角や口触手の先端が真っ赤になるのも特徴です。
性格も魅力的なアメフラシの仲間
クロヘリアメフラシは、アメフラシ科の一員です。アメフラシという名前を聞くと「紫色の汁を出す大きな海の生き物」をイメージする方が多いかもしれませんが、実はアメフラシ科にはいろいろな種類がいるんです。
アメフラシ、クロヘリアメフラシ、サガミアメフラシ、ミドリアメフラシ、ジャノメアメフラシなど…名前を挙げるとキリがないほど多様な仲間がいます。それぞれに少しずつ違った特徴を持っていて、海の中の生物多様性を感じさせてくれますよ。
クロヘリアメフラシも、アメフラシの仲間らしく紫汁腺を持っていて、刺激を与えると紫色の液体を出します。この紫色の液体は自己防衛の手段で、危険を感じたときに「煙幕」のように使うんです。ぼくたち人間にとっては無害ですが、海の中での自己防衛手段としては非常に効果的なんですね。
「え?こんな小さい体からも紫の液体が出るの?」と思われるかもしれませんが、その通り!小さな体でもしっかり紫汁を出して身を守ります。ただし、観察のためにわざと刺激を与えるのはやめておきましょうね。彼らにとっては貴重な防御手段を無駄遣いさせてしまいますから。
食べ物と生態
クロヘリアメフラシは主に海藻類を食べる草食性の生き物です。特に紅藻類や緑藻類を好んで食べます。写真を見ていただくと、緑色の藻の上にいるのがわかりますね。これは偶然ではなく、彼らのお気に入りの食事場所でもあるんです。
面白いことに、クロヘリアメフラシの外套膜(がいとうまく:体を覆う膜)には、餌である紅藻由来の化学物質が含まれており、魚類などの捕食者に対する防御効果を持っていることが知られています。つまり、「食べた物が身を守る盾になる」という賢い生存戦略を持っているんですね。
春から初夏にかけて、潮間帯の転石の下などに集まっていることが多く、この時期に三浦半島の海でもよく見かけることができます。特に僕たちが普段潜っているビーチポイントでは、近縁種のサガミアメフラシよりもクロヘリアメフラシの方がよく観察できるということもありますよ。
三浦半島の海で出会うには
三浦半島の海は、東京からのアクセスも良く、多くのダイバーに愛されているダイビングスポットです。ぼくたちのショップからもすぐに素晴らしいポイントにアクセスできるのが魅力です。
クロヘリアメフラシに出会いたい場合は、特に春から初夏にかけての時期がおすすめ。浅い岩場や海藻が豊富なエリアで見つかることが多いです。ただ、体が小さいので、目を凝らして探さないと見つけるのが難しいこともあります。でも、だからこそ見つけたときの喜びはひとしおですよね。
実際、ぼくたちのお客さんで「小さな生き物を見るのが好き!」という方は、こういった発見の喜びを求めて何度も潜りに来てくれます。大きな魚やサンゴだけが海の魅力ではない、ということを教えてくれる存在です。
初めての方は体験ダイビングでもクロヘリアメフラシに出会えるチャンスがありますし、もっと海の生き物を知りたいという方はライセンスを取得して、じっくり観察してみるのもおすすめです。
海の生き物から学ぶこと
クロヘリアメフラシのような小さな生き物を観察していると、自然界の繊細さや美しさを実感します。小さな体に必要な機能をすべて詰め込み、厳しい海の環境で生き抜く知恵と能力を持っているんですね。
とはいえ、これらの小さな生き物たちも、海の環境変化に敏感です。水温の上昇や水質の悪化、プラスチックごみなどの影響をもろに受けてしまいます。ダイビングを楽しむ際には、こういった海の生き物たちの環境を守るという意識も大切にしたいものです。
というわけで、次回三浦半島の海に潜る機会があれば、ぜひクロヘリアメフラシを探してみてください。小さな体に詰まった驚くべき生態や美しさに、きっと魅了されるはずです。そして、彼らが住む海を大切にする気持ちが、自然と湧いてくることでしょう。
海の中には、まだまだ知られていない生き物や不思議がたくさんあります。ぼくたちと一緒に、そんな神秘的な海の世界を探検してみませんか?
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