こんにちは!ダイビングインストラクターの吉田哲司です。今日はちょっと特別なお知らせがあります。このたび、『むずかしく考えなくて大丈夫! はじめてのセルフ(バディ)ダイビング』という本を出版しました!
今回のブログでは、その「はじめに」と「第1章」を特別に無料公開しちゃいます。「セルフダイビングって何?」「日本でもできるの?」そんな疑問にお答えする内容になっていますよ。
そのダイビング、「誰の」ダイビングですか?
いつも楽しんでいるダイビング、最高ですよね!あの青い海、カラフルな魚たち、日常を忘れさせてくれる特別な時間…本当にたまりません。
ところで、あなたが海に潜る時って、いつもどんなスタイルですか?
きっと多くの方が、ダイビングショップのツアーに参加して、経験豊富なインストラクターさんや頼りになるガイドさんと一緒に潜っているんじゃないかな、と思います。それ、すごくいいですよね!安心感が違いますし、どこに行けば面白いものが見られるか知り尽くしていますし、万が一の時も心強いです。道に迷う心配だってありません(これ、結構大事ですよね!笑)。
でも…ほんの、ほんのちょっとだけ。心の隅っこで、こんな風に感じたこと、ありませんか?
「あ!あっちに、もっと面白そうな生き物がいた気がするんだけどなぁ…」 「うーん、もう少しだけ、この場所でじっくり写真を撮りたかった…」 「このペース、ちょっと早いかも…もう少しゆっくり自分のペースで漂いたいな…」
あるいは、「いつになったら、ガイドさんなしでも潜れるようになるんだろう…?」なんて。
思い出してみてください。あなたがダイビングのライセンスカード、Cカードを取った時のこと。講習の最終日、インストラクターさんに言われませんでしたか?「おめでとう!これであなたも一人前のダイバー!バディ(一緒に潜る、信頼できる相棒のことですね!)さえいれば、世界中の海を潜ることができますよ!」って。
そう、あの小さなカードって、本来は「基本的な知識とスキルを身につけ、バディと一緒に安全にダイビングを楽しむ準備ができましたよ」っていう、いわば海へのパスポートのはず、なんですよね。
なのに、なぜでしょう?日本ではいつの間にか、「ダイビング=ガイドさんと潜るのが当たり前」という空気が、とっても強くなっている気がしませんか?
「セルフダイビング(プロのガイドさんをつけずに、バディ同士で計画して潜ることです!)」なんて言葉を聞くと、「えっ、何それ、危なそう!」「特別な訓練を受けた人じゃないとダメなんでしょ?」「いやいや、私なんかができるわけないって…」って、なんだか無意識にブレーキを踏んでしまうような。
うんうん、その気持ち、すごーくよく分かります!
何を隠そう、この本を書いているぼく、吉田は、普段、神奈川県の三浦半島にある『三浦 海の学校』というダイビングスクールで、皆さんと一緒に海を楽しんだり、インストラクターとして活動したりしています。
立場としては、PADIのコースディレクターという役割も担っていて、新しくインストラクターを目指す方々のトレーニングをお手伝いすることもあります。
…なんて言うと、「なんだか難しそうな肩書きの人が出てきたぞ…」って、ちょっと身構えちゃうかもしれませんね。もし、そう感じたらごめんなさい!全然そんなつもりはなくて(笑)。
ダイビング自体は1997年にオーストラリアのケアンズという街で始めて、ただただ海が好きで、気づけばこの仕事を長く続けている…そんな、いちダイバーなんです。
セルフダイビングって、実は選択肢の一つなんです
ただ、長くこの仕事に関わらせてもらっていると、どうしても「あれれ?ちょっと不思議だな」って感じることがあって…それは、皆さんが一番最初に受けることが多いCカード(ライセンス)講習で教わることと、実際の日本のファンダイビング(遊びのダイビングですね!)の現場との間にある、あの、なんとも言えないギャップ、なんですよね。
講習では、「おめでとうございます!これで、ちゃんと準備すれば、バディと一緒に安全に潜れますよ!」って、胸を張って送り出すわけです。私もそうお伝えしています。
…なのに、いざ「さあ、海でファンダイビングを楽しもう!」となると、日本では多くの場合、「はい、今日のガイドを担当します〇〇です!私についてきてくださいねー!」ってなりますよね。
もちろん、ガイドさんがいてくれることのメリットは計り知れません。安全面での安心感、珍しい生き物を見つけてくれる知識、効率的なコース取り…本当に感謝しています。
でも、一方で、「あれ?講習で習った『バディと潜る』っていうのは、一体いつ、どこで実践するんだろう?」って、シンプルに疑問に思ってしまうんです。まるで、車の運転免許を取ったのに、いつまでも助手席に先生がいないと運転しちゃダメ、って言われているような…そんな感覚に近いかもしれません。皆さんは、どう感じますか?
セルフダイビングは特別なことじゃない
決して、『ガイド付きダイビングがダメ』とか、そういうことを言いたいのでは全くありません。ガイドさんと潜る楽しさ、素晴らしさも、ぼくはよく知っています。
ただ、せっかくCカードを持っているなら、楽しみ方の選択肢がもっとたくさんあってもいいんじゃないかな?って。その一つの魅力的な選択肢として、「セルフダイビング」もあるんだよ、ということをお伝えしたいんです。
コースディレクターなんて肩書きがついていますけど、正直なところ、ぼく自身、今でも海に出るたびに新しい発見があったり、時には「うわっ、今の判断まずかったかも…」と反省したりすることばかりです。だから、決して上から目線で何かを教えようなんて気持ちは全くなくて、いちダイバー仲間として、皆さんが感じているかもしれない疑問や不安に寄り添いながら、一緒に考え、一緒に学んでいくような、そんな本にできたら最高だな、と思っています。
セルフダイビングって何?日本の”ふつう”のナゾ
まずは言葉の意味から整理しましょう!
セルフダイビング(またはバディダイビング): これが、この本で主にお話ししていくスタイルです。ものすごくシンプルに言うと、「プロのガイドさんをつけずに、ダイバー同士(バディ)で計画を立てて潜ること」を指します。ポイントは、「一人で潜る」のではなく、必ず「バディ」がいる、ということです。お互いをサポートし合いながら、自分たちの責任で海を楽しむ、そんなイメージですね。
ガイド付きダイビング: これは、皆さんが一番よく経験しているかもしれないスタイルですね。インストラクターさんやダイブマスターさんといった、プロのガイドさんが引率してくれるダイビングのことです。ルート選びから安全管理まで、多くをガイドさんにお任せできるので、安心感が高いのが特徴です。
ソロダイビング(単独潜水): これは文字通り、「完全に一人だけで潜ること」を指します。バディすらいません。万が一、何かトラブルが起きても助けてくれる人がいないので、非常にリスクが高いとされています。特別な訓練と装備、そして何より強い自己管理能力が求められる潜り方です。
どうでしょう?少し違いが見えてきましたか?
この本で「セルフダイビング」という時は、基本的に「信頼できるバディと一緒に、自分たちで計画して潜るスタイル」のことだと思ってくださいね。決して「一人で勝手に潜る」という意味ではない、という点が、まず最初の、そして一番大事なポイントです!
Cカードのホントの意味って?
さて、「セルフダイビングはバディと潜ること」というのが分かりました。となると、次に気になるのは、ぼくたちが(たぶん)持っている「Cカード」(ライセンスカードのことですね!)じゃないでしょうか。
特にダイビングを始めたばかりの人が取得することが多い「オープン・ウォーター・ダイバー(OWD)」のCカード。あれって、一体なんの証明なんでしょう?
指導団体によって細かい定義は少しずつ違いますが、基本的には「基本的なダイビングの知識とスキルを身につけ、適切な環境下で、バディと一緒に、自分たちの責任においてダイビングを楽しむことができる」ということを示しているんです。
ぼくがダイビングを覚えたオーストラリアなんかだと、この感覚が結構普通で。Cカードを取ったら、「よーし、これで週末、友達とあそこのビーチに潜りに行けるぞ!」って、自分たちで計画を立てて遊びに行くのが、わりと当たり前のスタートライン、みたいな雰囲気がありました。
でも、日本ではどうでしょう?講習が終わる時に、「はい、これでガイドさんと一緒にファンダイビングを楽しめますね!」って言われることの方が、もしかしたら多いかもしれません。
なぜ日本ではガイド付きが「ふつう」になったの?
この違いには、いろんな理由があると思います:
- 日本のレジャーダイビングの始まり方: 日本でダイビングがレジャーとして普及し始めた頃って、今みたいにたくさんの指導者がいたわけじゃなかったんです。だから、講習からファンダイビングまで、特定の指導者やお店が、まるっと面倒を見るような形が多かったのかもしれません。
- 漁業権の問題: これが結構大きいんです!日本の海は、多くの場合、地元の漁師さんたちの生活の場でもあります。「漁業権」というものが設定されている場所が多く、ルールを守るためにガイドさんと一緒に潜る形が安全で確実になりやすかったんですね。
- ぼくらダイバー側の気持ち: 「スキルにまだ自信がないな…」「計画するの面倒だな…」「バディ探すの大変そう…」といった気持ちもあって、ついつい「楽で安心なガイド付きがいいや!」ってなりがちです。
こんな風に、いろんな理由が組み合わさって、今の日本の「ダイビング=ガイド付きがふつう」という状況ができてきたんじゃないかな、と思います。
セルフダイビング、やってもいいの?
驚くかもしれませんが、日本には、車の運転免許のような、スクーバダイビングをするための国家資格って、存在しないんです。だから、法律上はCカードを持っていなくても、ダイビングをすること自体が「犯罪」になるわけではありません(もちろん、安全面を考えたら絶対にありえませんけどね!)。
でも、法律で直接禁止されていなくても、現実にはたくさんの「ルール」が存在します:
- 地域のルール: 条例や漁業協定で定められたルールがあります
- 施設やサービスのルール: ダイビング施設やショップが定める利用規約や条件があります
つまり、どういうことかと言うと…法律で直接「セルフダイビング禁止!」とは言われていないけれど、実際には、潜る場所ごとに定められたローカルルールや、施設ごとの利用規約を、絶対に守らなくちゃいけないんです!
【目次】
まえがき:こんにちは! そのダイビング、「誰の」ダイビングですか?
【第1章】「セルフダイビング」って、結局なんなの? – 基本のキと、日本の“ふつう”のナゾ
◆ まずは言葉を整理しよう!「セルフ」「バディ」「ソロ」って何が違うの?
◆ Cカードのホントの意味って、なんだっけ?
◆ なんで? 日本のダイビング界の「ふつう」ができるまで
・日本のレジャーダイビングの始まり方
・漁業権の問題(これが結構大きいかも)(+著者の実体験:漁協との対話)
・業界(ショップ)の考え方
・ぼくらダイバー側の気持ち
◆ で、結局やってもいいの? 法律やルールはどうなってる?
・法律上の話と現実のルール(地域のルール、施設のルール)
・許可不要エリアのリスク(漁船、誤解、縄張り意識など)
・指導団体のスタンス(バディシステム推奨と追加トレーニング)
◆ 第1章のまとめ:セルフダイビングは「自由」だけど「ルール」もある!
【第2章】海の向こうでは“常識”? – 世界の自由なセルフダイブ文化
◆ リゾート地では、意外と普通? バリ、ハワイ、オーストラリア…
◆ 車でポイント巡り!「ショアダイビング」文化の魅力
◆ 「バディ愛」が基本! 頼り、頼られる関係性
◆ なぜ違う? どう学ぶ? 日本と海外、それぞれのカタチ
◆ 第2章のまとめ:世界は広くて、楽しみ方もいろいろ!
【第3章】「自分の海」を見つけに行く人たち – セルフダイバーの素顔と本音
◆ どんな人がハマるの? セルフダイバーの傾向って?
◆ なぜ、わざわざセルフ? 彼らがガイド付きを選ばないワケ
・【水中写真、撮りまくりたい! フォト派ダイバーさん】
・【この子の生態が知りたい! 生物観察&探求派ダイバーさん】
・【ただ、静かに海を感じたい… マイペース&静寂派ダイバーさん】
・【海には慣れてるぜ! アウトドア派&元経験者ダイバーさん】
◆ これがたまらない! セルフだからこその「最高の瞬間」
◆ SNS・ブログから見える、セルフダイバーたちのリアル
◆ 第3章のまとめ:セルフダイブは「自分と向き合う」冒険?
【第4章】自由と危険は隣り合わせ – 本当にあった怖い話と、そこから学ぶ安全管理術
◆ 「やっぱり危ない?」セルフダイビングで起こりうること
◆ 本当にあった「ヒヤリ」体験談から学ぼう
◆ じゃあ、どうすればいいの? 安全に楽しむための「4つの鍵」
・【鍵1:潜る前の「準備」と「計画」が9割!】
・【鍵2:無理は禁物!「やめる勇気」と「引き返す判断力」】
・【鍵3:バディは一心同体! 頼り、頼られる関係づくり】
・【鍵4:「もしも」に備える! 必要なモノと知識】
【第5章】「できる!」自信をつけるために – 必要なスキルと“セルフ脳”の育て方
◆ 正直、どれくらいの経験があれば安心?
◆ これだけはマスターしたい! セルフダイバー必須スキル5選
・① 水中ナビゲーション
・② 完璧な中性浮力
・③ 賢いエア管理
・④ 冷静なトラブル対処能力
・⑤ バディへのサポート力
・(肩の力を抜こう! 完璧じゃなくても大丈夫!)
◆ スキルアップ、どうすればいい? 魔法はないけど、近道はある!
◆ 「心構え」もスキルの一部! “セルフ脳”を育てよう!
◆ 第5章のまとめ:スキルと心、両方育てて、自信を持って海へ!
【第6章】バディの次は器材が相棒 – セルフダイバーの“七つ道具”と活用術
◆ なんで? セルフダイブだと器材が「超」重要なワケ
◆ これがないと始まらない! セルフダイバー必須安全器材リスト
◆ 「あると便利!」なお役立ちアイテムたち
◆ 器材トラブルを防ぐ! 愛情込めたお手入れと、潜る前の最終チェック
◆ 第6章のまとめ:頼れる相棒は、日頃の愛情で育つ!
【第7章】いよいよデビュー? – 日本で潜れるスポット&“はじめの一歩”ガイド
◆ 日本にもある! セルフOKなダイビングスポットを探してみよう!
◆ 場所によって全然違う! エリア別・スポット別の特徴と注意点
◆ 現地サービスとは「良い関係」を! 賢い利用法
◆ いよいよデビュー! “はじめの一歩”を踏み出すために
◆ 第7章のまとめ:具体的な道筋が見えてきた!
【第8章】ショップやインストラクターはどう思ってる? – 業界のホンネとセルフダイブの未来(ボリュームアップ版)
◆ 賛成? それとも…? インストラクターたちのリアルな意見
◆ ダイビングショップ側の“事情”と“ホンネ”
◆ 未来はどうなる? セルフダイビングを取り巻く環境の変化
◆ 第8章のまとめ:未来は、ぼくたちの手の中に!
あとがき:自分だけの海図を、さあ描こう!
(巻末情報)
◆ 読者限定特典のご案内
◆ 著者・三浦 海の学校・AquaBit LAB 紹介
◆ 参考文献リスト
◆ 奥付
【第1章】「セルフダイビング」って、結局なんなの? – 基本のキと、日本の“ふつう”のナゾ
さて、まえがきでは「セルフダイビング」っていう、ちょっと気になるキーワードが出てきましたよね。 「なんだかよく分からないけど、ちょっと興味が湧いてきたぞ…」なんて思ってくれた方もいるかもしれません。
この第1章では、まず、その「セルフダイビング」っていう言葉が、そもそも何を指しているのか、他の似たような言葉との違いも含めて、基本のキからスッキリさせていきたいと思います。
そして、まえがきでも少し触れた、日本のダイビング界の「ふつう」…つまり、なんでガイドさんと一緒に潜るのがこんなに当たり前になっているのか? その背景にあるかもしれない、ちょっとした「ナゾ」にも迫ってみようかな、と。
難しい話は抜きにして、まずは言葉の意味から、一緒に見ていきましょう!
まずは言葉を整理しよう!「セルフ」「バディ」「ソロ」って何が違うの?
ダイビングの話をしていると、「セルフで潜る」とか「バディダイビングが基本」とか、時には「ソロは危ない」なんて言葉を聞くことがありますよね。 これ、似ているようで、実は意味が違うんです。ややこしいですよね(笑)。
ここで、ざっくりと整理しておきましょう。
- セルフダイビング(またはバディダイビング): これが、この本で主にお話ししていくスタイルです。ものすごくシンプルに言うと、「プロのガイドさんをつけずに、ダイバー同士(バディ)で計画を立てて潜ること」 を指します。ポイントは、「一人で潜る」のではなく、必ず「バディ」がいる、ということです。お互いをサポートし合いながら、自分たちの責任で海を楽しむ、そんなイメージですね。海外では、ライセンスを取ったダイバーが普通に行っている潜り方だったりします。
- ガイド付きダイビング: これは、皆さんが一番よく経験しているかもしれないスタイルですね。インストラクターさんやダイブマスターさんといった、プロのガイドさんが引率してくれるダイビング のことです。ルート選びから安全管理まで、多くをガイドさんにお任せできるので、安心感が高いのが特徴です。日本のファンダイビングでは、これが主流になっています。
- ソロダイビング(単独潜水): これは文字通り、「完全に一人だけで潜ること」 を指します。バディすらいません。万が一、何かトラブルが起きても助けてくれる人がいないので、非常にリスクが高い とされています。特別な訓練と装備、そして何より強い自己管理能力が求められる潜り方で、日本ではまだ一般的とは言えませんし、多くの場所で推奨されていません。(なので、この本では基本的に扱いません。念のため!)
どうでしょう? 少し違いが見えてきましたか?
この本で「セルフダイビング」という時は、基本的に**「信頼できるバディと一緒に、自分たちで計画して潜るスタイル」** のことだと思ってくださいね。決して「一人で勝手に潜る」という意味ではない、という点が、まず最初の、そして一番大事なポイントです!
Cカードのホントの意味って、なんだっけ?
さて、「セルフダイビングはバディと潜ること」というのが分かりました。 となると、次に気になるのは、ぼくたちが(たぶん)持っている「Cカード」(ライセンスカードのことですね!)じゃないでしょうか。
まえがきでも少し触れましたけど、特にダイビングを始めたばかりの人が取得することが多い「オープン・ウォーター・ダイバー(OWD)」のCカード。あれって、一体なんの証明なんでしょう?
指導団体によって細かい定義は少しずつ違いますが、基本的には**「基本的なダイビングの知識とスキルを身につけ、適切な環境下で、バディと一緒に、自分たちの責任においてダイビングを楽しむことができる」** ということを示しているんです。
ちょっと硬い言い方になっちゃいましたけど、ざっくり言えば、「これで、ちゃんと準備すれば、君たちだけで潜って大丈夫だよ!」っていう、海への入門許可証みたいなものなんですね。
ぼくがダイビングを覚えたオーストラリアなんかだと、この感覚が結構普通で。 Cカードを取ったら、「よーし、これで週末、友達とあそこのビーチに潜りに行けるぞ!」って、自分たちで計画を立てて遊びに行くのが、わりと当たり前のスタートライン、みたいな雰囲気がありました。車でビーチに行って、現地のショップでタンクだけ借りて、バディと「じゃ、行こうか!」みたいな。
もちろん、いきなり難しい場所に挑戦するわけじゃなくて、ちゃんと自分たちのレベルに合った、穏やかで安全な場所を選ぶんですけどね。
でも、日本ではどうでしょう? 講習が終わる時に、「はい、これでガイドさんと一緒にファンダイビングを楽しめますね!」って言われることの方が、もしかしたら多いかもしれません。決してそれが悪いわけではないんですが、Cカードが本来持っている「バディと一緒に自立して潜る」っていう側面が、ちょっと隠れちゃっているような印象を受けませんか?
「じゃあ、日本の講習で習ったことは意味ないの?」っていうと、そんなことは全くありません! 安全に潜るための基本的な知識やスキルは、ガイド付きだろうがセルフだろうが、絶対に必要ですからね。
ただ、Cカードが本来示している「できること」と、日本のダイビングシーンで「ふつうに行われていること」の間には、ちょっとしたギャップがあるんだな、ということを、まずは知っておくのが大事かな、と思うんです。
なんで? 日本のダイビング界の「ふつう」ができるまで
じゃあ、そのギャップは、一体どうして生まれたんでしょう? なんで日本では、こんなにもガイド付きダイビングが主流になったんでしょうか?
これには、たぶん、一つの理由だけじゃなくて、日本の歴史とか、文化とか、いろんな要因が複雑に絡み合っているんだと思います。ぼくなりの推測も入っちゃいますけど、いくつか考えられることを挙げてみますね。
- 日本のレジャーダイビングの始まり方: 日本でダイビングがレジャーとして普及し始めた頃って、今みたいにたくさんの指導者がいたわけじゃなかった、と言われています。だから、講習からファンダイビングまで、特定の指導者やお店が、まるっと面倒を見るような形が多かったのかもしれません。都市部にあるダイビングショップが、器材販売から講習、ツアーまで一貫して提供する、というビジネスモデルが主流になったことも、影響しているかもしれませんね。
- 漁業権の問題(これが結構大きいかも): 日本の海って、多くの場合、地元の漁師さんたちの生活の場でもありますよね。だから、勝手にどこでも潜っていいわけじゃなくて、「漁業権」というものが設定されている場所が多いんです。もし、ダイバーが好き勝手に潜って、アワビやサザエを獲ったりしたら…密漁になっちゃいますし、漁師さんたちの生活を脅かすことにもなりかねません。そういうトラブルを避けるために、ダイビングができる場所やルールが、地域ごとに決められていることが多いんですね。そうなると、必然的に「許可されたポイントで、ルールをよく知っているガイドさんと一緒に潜る」というスタイルが、安全で確実、ということになりやすかったのかもしれません。実は、これはぼく自身が、ここ三浦半島で『三浦海の学校』を始めた当初にも、痛感したことなんです。 ぼくたちのスクール前のビーチで、レジャーとして安全にダイビングを楽しみたい、セルフダイビングも受け入れたい、と考えて、地元の漁協さんに相談に行ったんですが、最初はなかなか理解していただけなくて…。どうしても、『ボンベ(タンクのことですね)を背負って海に潜る = アワビやサザエを獲る(密漁する)人たち』というイメージが強かったみたいなんです。『いやいや、ぼくたちは魚を獲るんじゃなくて、見て楽しむだけなんですよ!』って、何度も説明して、安全管理の体制もしっかりお伝えして、少しずつ信頼関係を築いていく…という、地道な努力が必要でした。こういう経験からも、日本でセルフダイビングがなかなか広がらなかった背景には、漁業との共存という、デリケートな問題があるんだな、と感じています。」
- 業界(ショップ)の考え方: ダイビングサービスを提供する側としては、やっぱり一番怖いのは事故です。だから、「安全第一」を考えると、経験豊富なプロがしっかり管理するガイド付きの方が安心、と考えるのは自然なことです。また、正直なところ、ビジネスとして考えると、講習が終わったお客さんに、継続してツアーに参加してもらった方が、経営的には安定しますよね。そういう「業界の事情」みたいなものも、もしかしたら少しは影響しているのかもしれません。(これは、あくまで一般論ですけどね!)
- ぼくらダイバー側の気持ち: そして、まえがきでも触れたように、ぼくらダイバー側にも、「スキルにまだ自信がないな…」「計画するの面倒だな…」「バディ探すの大変そう…」といった気持ちがあって、ついつい「楽で安心なガイド付きがいいや!」ってなりがちな部分もありますよね。
こんな風に、いろんな理由が組み合わさって、今の日本の「ダイビング=ガイド付きがふつう」という状況が、長い時間をかけて作られてきたんじゃないかな、とぼくは考えています。
で、結局やってもいいの? 法律やルールはどうなってる?
さてさて、ここまで日本のちょっぴり特殊なダイビング事情の背景を探ってきました。 「ふむふむ、なるほどねぇ」と思っていただけたかもしれませんが、たぶん、一番大事な疑問がまだ残っていますよね。
それは、「結局のところ、セルフダイビングって、やってもいいんですか?それともダメなんですか?法律とか、ルールとか、どうなってるの?」 っていう、核心の部分!
これ、すごく大事なポイントなので、しっかり押さえておきましょう。
まず、法律 の話から。 驚くかもしれませんが、日本には、車の運転免許のような、スクーバダイビングをするための国家資格って、存在しない んです。だから、極端な話をすれば、法律上はCカードを持っていなくても、ダイビングをすること自体が「犯罪」になるわけではありません。(もちろん、安全面を考えたら絶対にありえませんけどね!) つまり、「ガイドなしで潜るための特別な資格」が法律で定められているわけではない、ということです。
「えっ、そうなの!?」って思いませんか?
でも、ここで「じゃあ、どこで潜っても自由だー!」って思っちゃうのは、ちょっと待ってください! それは大きな間違いなんです。
法律で直接禁止されていなくても、現実にはたくさんの 「ルール」 が存在します。
- 地域のルール(条例や漁業協定): さっきも少し触れたように、日本の海には、その地域ごとに決められたルールがあります。都道府県や市町村の 「条例」 で、「このエリアは遊泳・潜水禁止!」と定められている場所もありますし、地元の漁業協同組合との間で、「ここでダイビングをする場合は、こういうルールを守ってくださいね」という 「漁業協定」 が結ばれていることも多いんです。これらを無視して潜ってしまうと、大きなトラブルになりかねません。
- 施設やサービスのルール(利用規約): ダイビングができる場所の多くは、ビーチであれボートであれ、何らかのダイビングサービス(施設やショップさんですね)が管理や運営に関わっています。そして、そうしたサービスは、安全確保や管理上の理由から、独自の 「利用規約」 を定めていることがほとんどです。そこにはっきりと「当店では、ガイドなしでのダイビング(セルフダイビング)は受け付けていません」と書かれていたり、「セルフで潜る場合は、〇〇以上のライセンスと、〇〇本以上の経験が必要です」といった 条件 が定められていたりします。
つまり、どういうことかと言うと… 法律で直接「セルフダイビング禁止!」とは言われていないけれど、実際には、潜る場所ごとに定められたローカルルールや、施設ごとの利用規約を、絶対に守らなくちゃいけないよ! ということです。 「セルフで潜りたいな」と思ったら、まずはその場所のルールをしっかり確認することが、何よりも大切なんですね。
じゃあ、特に漁協さんの協定とか、細かいルールが決まっていない場所なら、自由に潜っても安心かというと、実はそうとも言い切れないんです。 そういう場所でも、例えば、近くを漁船が頻繁に通っていて接触の危険があったり、あるいは、何も獲るつもりがなくても密漁と間違われてしまったりする可能性もゼロではありません。また、ルールとしては決まっていなくても、昔からその海で漁をしてきた漁師さんの中には、『ここは俺たちの漁場だ』という意識(縄張り意識、というと言葉が悪いかもしれませんが…)を持っている方もいらっしゃるかもしれません。 だから、たとえ明確な禁止ルールがない場所であっても、常に周りの状況に気を配り、漁船の邪魔にならないように配慮したり、地元の方への挨拶を心がけたりする、そういった『見えないルール』への意識も、すごく大事になってくるんです。
じゃあ、ぼくらが持っているCカードを発行している 「指導団体」 (PADIとか、NAUIとか、SSIとか、いろいろありますね)は、セルフダイビングについてどう考えているんでしょう?
多くの指導団体では、やっぱり 「バディシステム」 (常にバディと一緒に潜り、お互いを助け合う考え方)を安全の基本として、すごく重視しています。オープン・ウォーター・ダイバー(OWD)の講習でも、バディと協力して潜るスキルを学びますよね。
ただ、それと同時に、「もっと自立して潜りたい」「もしもの時に備えたい」というダイバーのために、追加のトレーニングコース も用意しているんです。
例えば、PADIには「セルフ・リライアント・ダイバー」っていう スペシャルティ・コース があります。「リライアント」っていうのは「頼れる」みたいな意味なので、「自分自身を頼れるダイバー」になるためのコースですね。これを受けるには、アドヴァンス以上の資格と、確か100本以上の経験が必要だったはずです。 他にも、SDIという指導団体では、その名も「ソロダイバー」という資格を発行していたりします。こちらも、十分な経験本数が条件になっています。
つまり、指導団体としても、「はい、Cカード取ったら誰でもすぐにセルフOK!」とは考えていなくて、「ちゃんと経験を積んで、さらに必要なスキルを学んだ上で、自己責任でチャレンジするものだよ」 というスタンスなんですね。
第1章のまとめ:セルフダイビングは「自由」だけど「ルール」もある!
さて、第1章では、「セルフダイビング」という言葉の意味から始まって、Cカードの本来の意味、そして日本のダイビング界のちょっぴり特殊な「ふつう」がどうやってできてきたのか、その背景を探ってみました。さらに、法律やルールについても確認しましたね。
ここまでで分かったのは、
- セルフダイビングは「一人で潜る」んじゃなくて、「バディと計画して潜る」こと。
- Cカードは本来、そのための基本的な証明書のはず。
- でも、日本では漁業権や安全管理、ビジネスなど、色々な理由でガイド付きが主流になった。
- 法律で禁止はされてないけど、場所ごとのルールや施設の決まりは絶対に守る必要がある。
- 指導団体も、経験と追加トレーニングを推奨している。
ということでしょうか。
なんだか、「セルフダイビングって、ただ『自由だー!やったー!』って好き勝手に潜ることとは、ちょっと違うんだな」って感じがしませんか? ちゃんと知っておくべき背景や、守るべきルールがある。その上で成り立つ「自由」なんですね。
でも、まえがきで「海外ではもっと気軽にセルフを楽しんでいる」って話もしましたよね?
じゃあ、海の向こうのダイバーたちは、一体どんな風に、この「自由」と「ルール(あるいは自己責任)」のバランスを取りながら、セルフダイビングを楽しんでいるんでしょうか?
次の第2章では、いよいよ視点を海外に移して、世界の自由気ままなセルフダイブ事情 を覗いてみることにしましょう! きっと、日本の「ふつう」とは違う、新しい発見があるはずですよ。お楽しみに!
この本について
この本は、かつて(いや、今もどこかで?)ぼく自身が感じてきたような「もやもや」や「ギモン」を抱えているかもしれないあなたと一緒に、セルフダイビングという選択肢について、もう一度フラットに見つめ直してみる、そんなきっかけになれたらいいな、と思って書き始めました。
大丈夫、専門書みたいに肩肘張る必要は全くありませんよ!まるで、ダイビングが大好きな友達とおしゃべりするような、そんなリラックスした気持ちで読み進めてもらえたら、最高に嬉しいです。
さあ、準備はいいですか?あまり難しく考えすぎずに、まずは好奇心のアンテナを立てて、一緒にセルフダイビングの世界を探検してみましょう!
この本は現在Kindleアンリミテッドで読み放題となっています!もし気に入っていただけたら、単品でもわずか99円でお求めいただけますので、ぜひチェックしてみてくださいね!
むずかしく考えなくて大丈夫! はじめてのセルフ(バディ)ダイビング: いつもの海がもっと輝き出す! 自由と安全を楽しむための第一歩はこちらからどうぞ。
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