春濁り、はじまりました。― 海の中に、季節の足音 ―
気がつけば、ずいぶんと更新が空いてしまいました。
Facebookではこまめに日々の記録を投稿していたものの、ブログとなるとまとまった時間と気力が必要で、気づけば後回しになっていました。久しぶりにゆっくりと言葉を綴ってみようと思います。 読んでくださっている方、お待たせしました。
春のにおいがする季節に
外に出ると、空気がずいぶんと柔らかくなりました。朝晩はまだ肌寒い日もありますが、昼間の陽射しにはたしかな春の温もりが感じられます。梅の花が終わり、桜の便りが聞こえてくるこの時季。1年の中でも、水中ダイバーにとっては少し複雑な気持ちになる時期でもあります。
それが、「春濁り」 です。
春濁りとは
春濁りとは、春先に植物性プランクトンが大量発生することで海水の透明度が落ちる現象です。水温が少しずつ上がり始め、日照時間が長くなることで植物性プランクトンが急増します。これは海全体が栄養たっぷりになるサインでもあり、魚たちにとっては豊かな季節の幕開けです。
ただし、ダイバー目線では「水が緑がかって霞む」「視界が狭くなる」 というコンディションになります。
3月16日現在、ビーチの水温は14度、ボートは12度。 透明度は約3メートルほど。春濁り、しっかり発生中です。
透明度3メートルというのは、慣れていない方には少し驚かれるかもしれません。手を伸ばせば届きそうな距離しか見えない、白っぽく霞んだ視界の中を泳ぐ感覚は、確かに爽快さとは少し違う。けれど、これがまた独特の雰囲気を持っていて、私は案外この季節の海が好きです。
霞の中に浮かぶ生き物の輪郭。 近づいて初めてわかる、その種類と色。視界が狭い分、出会った瞬間の密度が濃くなる。これが春濁りの、ちょっとした醍醐味だと思っています。
今日の水中レポート
そんな春の海、今回もしっかり生き物に出会えました。
タツノオトシゴ
ホースフィッシュとも呼ばれる、あの独特の体型を持つ魚です。藻や海藻にしっかり尾を巻きつけ、ゆらゆらと体を漂わせながら静止していました。透明度が低い水中でも、じっとしているタツは見つけると「いた!」 という感動があります。彼らはほとんど動かないため、見逃してしまうことも多いのですが、今日はうまく見つけることができました。春になって個体数も増えてくる時季なので、これからも目を凝らして探していこうと思います。
ムカデミノウミウシ
ウミウシというと地味な印象を持たれる方もいるかもしれませんが、これがなかなか華やかな見た目をしています。白い体に、外鰓(ツノのように見える突起)が背中一面に広がっており、まるで小さな王冠のよう。春の濁り水の中でも、その白さがはっきりと映えていました。動きもゆっくりで、撮影しやすい被写体のひとつです。ウミウシはこれからの季節、種類も増えてきますので、今シーズンも探すのが楽しみです。
トラフケボリ
少し通好みのマニアックな生き物かもしれませんが、ご存知でしょうか。巻き貝の仲間で、宿主となるヤギやウミトサカに寄り添って暮らしています。白地に黒いまだら模様の外套膜を広げた姿は、まるでヒョウ柄のコートをまとったような存在感。見た目のインパクトとは裏腹に、とても動きはゆっくりです。見つけるには少し経験が必要ですが、一度目が慣れてくると「あ、いた」 と分かるようになってきます。今日は数個体を観察することができました。
春の海と向き合うということ
透明度が低く、水温もまだ冷たい。 そう聞くと「今の時季は潜らなくていいかな」と感じる方もいるかもしれません。でも、春濁りの海には春濁りの海にしかない出会いがあります。プランクトンが増えるということは、それを食べに来る小魚が増えるということ。
そして小魚を狙う大型魚も活発になる。食物連鎖が動き始める、まさに海のエンジンがかかる季節です。
水温12〜14度というのも、ドライスーツさえあれば十分に楽しめる水温です。ドライスーツ未体験の方は、ぜひこの機会に挑戦してみてください。一年中潜れるようになると、海の見え方がまるで変わります。
次回の更新も楽しみにしていてください
ブログの更新が滞ってしまっていた分、これからはもう少しこまめに書いていこうと思っています。水中の様子、生き物の情報、コンディションのリポートなど、現場の声をできるだけ届けていけたらと思っています。
春の海はこれから少しずつ透明度が戻り、水温も上がり、賑やかな季節へと移っていきます。 その変化をぜひ一緒に楽しみましょう。次回の更新もどうぞお楽しみに。
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