ダンゴウオを追いかけて——小雨の三浦で宝探しダイビング

ダンゴウオを追いかけて——小雨の三浦で宝探しダイビング

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月に一度、必ず海に会いにきてくれるリピーターのSさん。

今日もいつものように笑顔で「おはようございます」 と到着してくれました。もはや月イチの恒例行事のようになっているSさんとのダイビングは、僕にとっても毎回楽しみな一日です。

小雨のち晴れ——春の三浦は気まぐれ模様

今日の三浦半島は朝から小雨模様。気温は12度と、三月下旬にしてはまだ少し肌寒い一日でした。ウェットスーツに着替えるときは正直「うう、冷たい」と声が漏れてしまいますが、こういう日こそ海の中が面白いものです。

実は、ダイビングを終えてエキジットすると、空にはうっすらと青空が広がり始めていました。海から上がったら晴れるというのは、ダイバーあるあるかもしれません。「海の神様が潜っている間だけ雨を降らせたんですかね」とSさんが笑っていましたが、まさにそんな気まぐれな春の一日でした。

透明度5m——春濁りの海を楽しむ

エントリーしてみると、水温は13度。ドライスーツでなければ少し厳しい水温ですが、この時季としては想定の範囲内です。 透明度は約5メートルと、いわゆる「春濁り」の真っ只中。遠くまで見渡すことはできませんが、この濁りにはちゃんとした理由があります。

春になると海水温が上昇し始め、植物プランクトンが一気に増殖します。 これが春濁りの正体です。ダイバーにとってはやや視界が悪くなるので敬遠されがちですが、このプランクトンが海の食物連鎖の出発点となり、やがて多くの生き物を育てていきます。 いわば、海が一年で最も「がんばっている」季節なのです。

そして春濁りの海には、もうひとつの魅力があります。海底にはたくさんの海藻が茂り、まるで水中の森のような景色が広がっていました。ワカメやアオサが揺れる様子は、クリアな海とはまた違った趣があります。この海藻の森こそが、小さな生き物たちの隠れ家であり、僕たちの宝探しのフィールドになるのです。

今日の水中レポート

今日のテーマは「ダンゴウオを見つけたい」。Sさんのリクエストもあり、エツキイワノカワや海藻をじっくりと探しながらのダイビングとなりました。この時期の生物探しは、まさに宝探しそのもの。小さな生き物が海藻や岩の隙間にひっそりと暮らしているので、見つけたときの喜びは格別です。

アオウミウシ

まず最初に目に入ったのは、三浦の定番ともいえるアオウミウシです。鮮やかな青い体に黄色の縁取り、オレンジ色の触角というコントラストが美しく、何度見ても飽きません。体長は2〜3センチほどで、岩の表面をゆっくりと這っていました。三浦では一年を通じて見られますが、春先は特に個体数が多く、あちこちで出会うことができます。ウミウシ観察の入門種としても最適で、初心者ダイバーにもぜひ見つけてほしい一種です。

シラユキウミウシ

次に見つけたのは、その名の通り雪のように白い体が特徴のシラユキウミウシ。体の表面には小さな突起があり、半透明の白い体がライトに照らされると、まるで雪の結晶のように繊細に輝きます。体長は1〜2センチと小さめで、岩の窪みや転石の裏に隠れていることが多いため、注意深く探さないと見落としてしまいます。 Sさんが「これ、きれいですね」と指を差したのがこのシラユキウミウシでした。

サラサウミウシ

続いてサラサウミウシ。白い体に赤褐色の網目模様が入り、まるで更紗(さらさ)の布地のようであることからこの名前がつきました。体長は3〜5センチほどと、ウミウシの中では比較的大きく見つけやすい種類です。春から初夏にかけてが観察のシーズンで、岩場の表面を堂々と歩く姿はなかなかの存在感。模様の個体差も面白く、じっくり観察すると一匹一匹が少しずつ違うことに気づきます。

ヒラミルミドリガイ

海藻の上でひっそりと暮らしていたのがヒラミルミドリガイです。ミルという海藻に擬態するために体が緑色をしており、海藻の上にいると本当に見分けがつきません。体の両側にある翼のようなパラポディア(側足)を広げている姿は、小さな蝶のようにも見えます。嚢舌目(のうぜつもく)と呼ばれるグループに属し、食べた海藻の葉緑体を自分の体内に取り込んで光合成をするという、驚くべき能力を持っています。

コノハミドリガイ

ヒラミルミドリガイと同じく、緑色の体が特徴のコノハミドリガイも見つかりました。 こちらは名前の通り「木の葉」のような形をしており、側足を閉じた姿はまさに一枚の葉っぱそのもの。海藻の間に紛れていると本当に見つけにくく、Sさんと二人で「これは海藻? ウミウシ?」と顔を見合わせる場面もありました。ヒラミルミドリガイと同じく葉緑体を取り込む種で、光合成をする動物という不思議な存在です。

ヒラタエイ——砂地からびっくり登場

ウミウシを探しながら砂地のエリアにさしかかったとき、突然砂の中から何かがバサッと飛び出しました。 ヒラタエイです。砂に隠れていたところを私たちが近づいたことで驚いて飛び出したのでしょう。平たい体をひるがえして泳ぎ去る姿に、Sさんも私も一瞬フリーズしてから大興奮。小さな生き物をじっくり探していた矢先の大物登場に、お互い思わず水中で笑ってしまいました。尾には毒棘がありますので、砂地を移動するときは着底に注意が必要ですが、見られるとやはり嬉しい出会いです。

ダンゴウオは次回のお楽しみに

今日の最大の目標だったダンゴウオは、残念ながら見つけることができませんでした。体長わずか1〜2センチ、丸くて愛らしいこの魚は冬から春先にかけてが観察シーズンですが、その小ささゆえに見つけるのは至難の業。海藻や岩の隙間にちょこんと吸盤でくっついているのですが、今日は春濁りもあって条件が厳しかったようです。

とはいえ、今日だけでもたくさんのウミウシたちに出会い、まさかのヒラタエイにも遭遇できて、十分すぎるほど充実したダイビングでした。 Sさんも「ダンゴウオは来月の宿題ですね」と楽しそうに話してくれました。

ダイビング後のお楽しみ——地元野菜の直売所

三浦でのダイビングの楽しみは、海の中だけではありません。帰り道には農家さんの直営販売所があり、新鮮な地元野菜を手頃な価格で購入することができます。

今日のSさんのお買い物は、立派なダイコンとブロッコリー。三浦半島は温暖な気候を活かした農業が盛んで、特に三浦ダイコンは全国的にも有名です。スーパーで買うよりもずっと安く、しかも朝採れの新鮮さ。海で遊んだあとに美味しい野菜も手に入るとは、まさに一石二鳥です。

ダイビングに来た際には、ぜひ帰り道に直売所にも立ち寄ってみてください。季節ごとに並ぶ野菜が変わるのも楽しみのひとつです。

おわりに

小雨の中のスタートでしたが、海の中ではウミウシたちが待っていてくれて、ヒラタエイのサプライズまであった楽しい一日となりました。春濁りで透明度は低くても、足元をじっくり見ればこんなにたくさんの生き物たちが暮らしています。 この時期ならではの「水中の宝探し」を、ぜひ皆さんも体験しに来てください。

Sさん、今月も来てくれてありがとうございました。 来月こそダンゴウオに会いましょう。

そして、ダイコンのお味はいかがでしたか。 次回のレポートもお楽しみに。

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