300本超えのベテランがフィンワークを練習する理由|4月の三浦ダイビング

4月、外気温21度・水温15度・透明度6mの三浦。経験300本超えのリピーターOさんが、あおり足・ヘリコプターターン・ブレーキ・バックキックを淡々と練習する理由と、「なんでみんなこんな楽しいことしないんだろうね?」の一言。

300本超えのベテランがフィンワークを練習する理由|4月の三浦ダイビング

この記事は2026年4月に書いたものです。開催場所や料金、講習の進め方は、いまと違うところがあります。いまの内容は アドバンス講習(AOW) のページをご覧ください。

こんにちは、三浦 海の学校の吉田です。

この日は経験300本超えのOさんが、フィンワークの練習をする日でした。あおり足、ヘリコプターターン、ブレーキ、バックキック。4月の三浦は快晴で、外気温は21度まで上がって、陸にいる分には半袖でも汗ばむ陽気。こういう日は決まって「海の中も暖かいんですか?」と聞かれるのですが、残念ながら海の中はまだ冬の続きです。

それでもこうして潜りに来てくれるリピーターのみなさんには、いつも頭が下がります。

4月の三浦半島、気持ちのいい春晴れ

青空の下、海面がきらきらしていました。

風も穏やかで、ビーチへ向かう道がとにかく気持ちいい。21度という気温は、厚手のウェットスーツやドライスーツを着込むダイバーにはちょうどいいくらいで、陸で準備しているあいだに汗だくになる心配もありません。

こういう日が一番好きです。海に入る前から気分が上がる。GWまであと少しというこの時期、平日にもかかわらず今日も元気な常連さんが来てくれました。

水温15度・透明度6m、春濁りの入り口

水温は15度。4月としては平均的な数字ですが、やはり冷たい。ドライスーツ必須の水温です。

透明度は6メートルから、といったところ。春の三浦によくある状況で、プランクトンが増えはじめて視界が白っぽく落ちてくる季節です。いわゆる「春濁り」の入り口にさしかかっている感じ。

春濁りというのは、水温が上がりはじめる春先に植物プランクトンが大量発生することで起きる現象です。見通しは悪くなりますが、それだけ海の中が生き物で賑わっている証拠でもある。じっくり目を凝らせば、むしろマクロな楽しみが増える季節でもあります。

6メートルという透明度は、広角でドーンと撮るには物足りないかもしれません。でも今日のOさんには関係なかった。海の見通しより、自分の足先のほうに集中していたので。

300本超えのOさん、フィンワークの練習

Oさんは経験本数300本を超えるベテランダイバーです。毎週のように三浦に来てくれる、うちの学校の大切なリピーターさん。

最近のOさんのテーマは「フィンワークの練習」です。

最初に聞いたとき、正直少し意外でした。300本以上潜っている方が、今さらフィンワーク?と。

でも話を聞いてみると、「ちゃんとできているつもりだったけど、改めてやってみたら全然だった」とのこと。自分の泳ぎを客観的に見直したとき、基礎がまだ甘いと気づいた、という話でした。

今取り組んでいるのは、あおり足から始まり、ヘリコプターターン、ブレーキ、そしてバックキックまで。一つひとつ、丁寧に。

あおり足というのはフィンの端を使って水を後ろに蹴り出す推進力の基本。ヘリコプターターンはその場で水平に回転するテクニックで、狭い場所でのコントロールに使います。ブレーキは前進してきた体を水中で止める動作、バックキックはその名の通り後進するためのキック。

どれも「知っている」と「できる」のあいだには、大きな差があります。

Oさんはそれを淡々とこなしていました。急ぐわけでもなく、焦るわけでもなく、ただ静かに、丁寧に繰り返す。

ある瞬間、ふとこちらに振り向いて言ったんです。

「なんでみんなこんな楽しいことしないんだろうね?」

この一言、刺さりました。

フィンワークって、地味です。傍から見ると、ただその場でくるくるしたり、後ろに下がったりしているだけ。派手さはない。でもOさんにとっては「できなかったことができるようになっていく」感覚が純粋に楽しい、ということなんだと思います。

300本という経験を積んでなお、学ぶことに喜びを感じている。これはすごいことだなと思って、僕はひそかに感動していました。

その間、僕はマクロ探し

Oさんが練習に集中している間、僕はといえば……マクロ探しをしていました。笑

インストラクターとして付き添っているわけですが、Oさんは腕前も判断力も十分。安全な範囲で一定の距離を保ちながら、僕は岩の隙間や砂の上に目を走らせていました。

透明度が落ちているこの時季は、足元にじっと潜む小さな生き物を探すのが楽しい。春の三浦の海は、マクロ好きにとってはなかなかのフィールドです。

エツキイワノカワやカジメなどの海藻の根元あたりに目を凝らすと、小さなウミウシが見つかったりします。この季節はまだ種類が多くて、ゆっくり探せばいくつも出会えます。砂地ではハゼ類も出てきはじめていて、春の海の豊かさを感じます。

一人でこっそり楽しんでいたわけですが……それもまた楽し、という感じで。

何度来ても新しい発見がある海

Oさんのように、何度来ても新しい発見がある。それが三浦の海の良さだと思っています。この日もOさんは、あおり足からバックキックまでを淡々と繰り返していました。水温15度、透明度6メートルの三浦でした。