浮力コントロールだけを練習する日|宮川湾ボートで自由潜降とホバリング
三浦・宮川湾のボートダイビングで、リクエストにお応えして浮力コントロールを徹底練習。自由潜降・浮上とロープ下でのホバリング、タコとメバルにも出会えた一日のログです。
こんにちは、三浦 海の学校の吉田です。今日は三浦・宮川湾のボートダイビングで、リピーターのOさんと1本まるごと浮力コントロールの練習をしました。
事前のリクエストは「浮力コントロールをみっちり練習したい」。生き物探しでも地形探検でもなく、ひたすら基礎練習の一日です。
宮川湾は水温22〜24度・透明度8mから
8月も後半に入りましたが、三浦の海はまだまだ夏本番です。今日の宮川湾は海況良好。ボートの上から見下ろす海面は穏やかで、出港前から「今日はいい一日になるな」と思える朝でした。
水温は22度から24度。ウェットスーツで快適に潜れる、気持ちのいい温度帯です。深度や潮の当たり方で温度の層が変わるのを肌で感じられるのも、この時季ならでは。透明度は8mから。真夏の三浦としては十分に見えている方で、練習ダイビングにはむしろ集中しやすいコンディションでした。
宮川湾のボートポイントは、港を出てから数分で到着します。船に揺られる時間が短いので、船酔いが心配な方にも優しいのが三浦のボートダイビングの良いところ。今日もエントリーの瞬間から、青い水と岩礁のコントラストが迎えてくれました。
リクエストは「ひたすら浮力コントロール」
ファンダイビングというと、生き物や地形を楽しむイメージが強いと思います。でも今日のOさんのリクエストは違いました。「自由潜降と浮上、それからホバリングを徹底的にやりたい」。
僕はこういうリクエスト、大歓迎です。浮力コントロールはダイビングのすべての土台。ここが安定すると、写真も生き物観察もドリフトも、全部が一段階うまくなります。逆に言うと、ここが不安定なまま本数だけ重ねても、どこかで頭打ちになるんです。
浮力が安定すると、良いことがたくさんあります。まず、エア(空気)の消費が減ります。無駄なフィンキックやBCDの給排気が減るからです。次に、砂を巻き上げなくなるので、透明度の中でもきれいな視界のまま生き物を観察できます。そして何より、海底の生き物やサンゴ、海藻を傷つけない。三浦の海を長く楽しむためにも、大事なスキルなんです。
今日はOさんと相談して、1本まるごと練習に使うプランにしました。少人数制だからこそできる、ぜいたくな時間の使い方です。
自由潜降、ロープに頼らず耳と浮力で降りる
まずは自由潜降の練習から。潜降ロープを握って降りるのではなく、BCDの空気を抜きながら、耳抜きと呼吸のリズムだけでゆっくり沈んでいく練習です。
コツは「焦らないこと」。沈まないからといって一気に空気を抜くと、途中から加速して着底が乱暴になります。少し抜いて、呼吸で反応を確かめて、また少し抜く。降りながら耳抜きをこまめに続けて、姿勢は水平を意識する。やることは意外と多いのですが、一つひとつを丁寧にやれば必ず安定します。
Oさんは回数を重ねるごとに、着底寸前でふわっと止まれるようになっていきました。着底しない「寸止め」ができるようになると、潜降はもう卒業です。
ロープ下でひたすらホバリング
次はロープの下で中性浮力のキープ。目標物のそばで、深度を変えずにじっと浮き続ける練習です。

これが見た目以上に奥が深い。BCDの給排気で合わせるのは大まかな調整で、最後の微調整は肺、つまり呼吸でやります。吸えばわずかに浮き、吐けばわずかに沈む。この振り幅を体で覚えると、水中で「止まる」ができるようになります。
Oさんも最初は少し上下していましたが、後半は呼吸だけで深度を保てる時間がどんどん伸びていきました。じっと止まれるようになると、水中の景色の見え方が変わります。余裕が生まれるからです。
浮上、安全に「上がる」技術
最後は浮上の練習。浮上は潜降以上に大事な技術です。スピードが速すぎないか、目線と手の位置は正しいか、安全停止でぴたっと止まれるか。ロープのそばで何度も繰り返しました。
浮上で難しいのは、上がるにつれてBCDやスーツの中の空気が膨らんで、浮力がどんどん増えていくこと。何もしないと浮上スピードは勝手に加速していきます。だから浮上中は、空気を少しずつ逃がしながらスピードを一定に保つ。この感覚がつかめると、安全停止の3分間もロープなしでぴたっと止まれるようになります。
浮上のコントロールが身につくと、ダイビング全体の安心感がまるで違ってきます。Oさんも最後の1本では、浮上のリズムがすっかり落ち着いていました。
練習の合間に会ったタコとメバル
練習メインの一日でしたが、宮川湾の海はちゃんとご褒美も用意してくれていました。

タコ
岩の隙間にタコを発見。タコは三浦の岩礁地帯ではおなじみの住人ですが、擬態がうまくて意外と見つけるのが難しい生き物です。体の色も質感も一瞬で周りの岩に合わせてしまうので、「岩だと思ったら目が合った」なんてことも。
タコを探すコツは、岩の隙間の「入口」を見ること。巣穴の周りに貝殻が散らばっていたら、それはタコの食事の跡で、近くに本人がいるサインです。今日は浮力練習で目線が安定していたおかげか、Oさんもじっくり観察できました。中性浮力が取れていると、生き物に余計なプレッシャーをかけずに近づけるので、向こうも逃げずにいてくれるんです。
メバル
岩場の上には、メバルの姿も。メバルは大きな目が特徴の根魚で、水中でじっとホバリングしていることが多い魚です。実は彼ら、中性浮力の名人。ヒレをほとんど動かさずに、潮の流れの中でぴたりと定位置を保ちます。今日の僕たちにとっては、いわばお手本のような存在でした。「あの魚みたいに止まれたら合格です」なんて話をしながらのダイビングでした。
メバルは春告魚(はるつげうお)とも呼ばれますが、三浦の海では季節を問わず岩場で会える身近な魚です。じっとしているように見えて、目だけはしっかりこちらを追っている。観察しているつもりが観察されている、そんな面白さのある魚です。
リピーターほど基礎の練習をリクエストする
派手な生き物ラッシュや大物との遭遇も嬉しいですが、今日みたいに一つのスキルをじっくり磨く一日も、本当に良いものです。上達が自分ではっきり分かるし、次のダイビングが確実に楽しくなる。何より、海の中で「できなかったことができるようになる」瞬間に立ち会えるのは、インストラクターとしても嬉しいものです。Oさん、お疲れさまでした。
リピーターの方ほど、こういう基礎の練習をリクエストしてくれます。経験を重ねるほど、土台の大切さが分かってくるからだと思います。逆に、始めたばかりの頃こそ変な癖がつく前に練習しておくと、その後の伸びがまったく違います。
三浦 海の学校では、こうしたリクエストベースのファンダイビングをいつでもお受けしています。中性浮力を鍛え直したい、自由潜降が苦手、ブランクで感覚を取り戻したい、そんなご相談も歓迎です。
Oさんは最後の1本で浮上のリズムが落ち着き、潜降は着底寸前の寸止めまでできるようになりました。次に潜る日が、確実に楽しくなるはずです。