ダイビングのマスクの選び方|講習が中止になった日に器材相談をした話
台風のうねりが残る三浦でAOW講習は中止に。かわりに始まったのはマスクとスノーケル選びの相談でした。ダイビングのマスクの選び方を、現役インストラクターが解説します。
こんにちは、三浦 海の学校の吉田です。今日は台風のうねりでアドバンスド・オープン・ウォーター(AOW)講習を中止にして、そのかわりにマスクとスノーケルを選ぶ相談の日になりました。ダイビングのマスクの選び方を、現場の目線で書きます。
うねりは、潜れないほどの大荒れではありませんでした。でも「潜れなくはない」と「安心して講習ができる」は別ものです。
うねりが残る三浦の海で、AOW講習を中止にした理由
台風本体はもう遠ざかっていて、空はむしろ穏やかでした。海も、遠目には「行けそう」に見える程度のうねりです。実際、経験を積んだダイバーだけのファンダイビングなら、ポイントを選んで潜れた海だったと思います。それでも中止にしたのは、今日が講習だったからです。
講習では、水中でスキルの練習をします。マスクの中に入った水を出したり、中性浮力を微調整したり、コンパスを見ながら泳いだり。どれも「体の位置を保ったまま、別のことに集中する」課題です。ここに周期的なうねりが加わると、集中すべき場所が増えてしまって、うまくいくものもうまくいきません。エントリーとエキジットも、波打ち際を通るビーチでは負担が大きくなります。
海況そのものより、お客様のスキルレベルと海況を掛け合わせてどうか。判断の基準はいつもそこです。同じ海でも、誰と潜るかで答えは変わります。今日は「安全に、しかもちゃんと身につく講習ができるか」を考えて、中止という結論になりました。
残念です。正直に言えば、僕も潜りたかったです。でも、そんな日もあります。海は逃げませんし、次に開いた日の海のほうがきっといい思い出になります。
なお、うねりで海がクローズになるときの判断の流れは、前回の記事で詳しく書いています。
ダイビング器材は、レンタルから少しずつでいい
今日ご一緒するはずだったのは、オープン・ウォーター・ダイバー(OWD)を三浦 海の学校で取得してくださったLさんです。そのままAOWへ進んでくださっている、うれしい流れのお客様です。
三浦 海の学校では、器材はレンタルでそろいます。ライセンスを取ったばかりの方が、いきなりフルセットをそろえる必要はまったくありません。まずはレンタルで何本か潜って、海に通うペースが自分の中で見えてきてから考えれば十分です。この話はまんが「器材はレンタルでいい」でも読めます。
そのうえで、潜る本数が増えてくると、だんだん「これは自分のが欲しいな」という道具が出てきます。順番は人によってまったく違うのですが、そこに性格が出るのが面白いところです。
Lさんが講習を終えて最初に買ったのは、ダイブコンピューターでした。これがなかなか渋い選択です。ダイブコンピューターは、自分がどのくらいの深さに、どのくらいの時間いたのかを記録して、安全に浮上するための情報を教えてくれる機械です。見た目の楽しさで選ぶタイプの器材ではありません。「自分の潜りを自分で管理する」という、ダイバーとしての姿勢がそのまま形になったような1台目でした。
今日の相談はマスクとスノーケル
そして今日の相談が、マスクとスノーケルです。しかも自分のぶんと、旦那さんのぶん。2人分を並べて選ぶ時間になりました。
マスクは、実はいちばん最初に自分専用を持つ価値がある器材だと僕は思っています。理由は単純で、顔の形は人によって違うからです。レンタルのマスクでももちろん潜れますが、自分の顔に合った1枚を見つけると、水中での快適さがはっきり変わります。
ダイビングのマスクの選び方、見るのは4つ
「ダイビングのマスクの選び方」でよく聞かれることを、現場の目線でまとめます。

フィットがほぼすべて
高いマスクが良いマスクではありません。自分の顔に合うマスクが良いマスクです。
確認の仕方は簡単で、ストラップを使わずにマスクを顔にあて、軽く鼻から息を吸ってみます。手を離しても顔に吸いついたまま落ちなければ、その形は合っています。すっと落ちてしまうなら、どこかに隙間があるということです。
このとき、前髪がスカート(顔に当たるやわらかい部分)に挟まっていないか、笑ったり口を開けたりしても浮かないかも見ます。実際に水中では表情が動きますし、レギュレーターをくわえると頬の形も変わります。店頭で真顔のときだけフィットしていても、水中で漏れてしまうことがあるのです。
マスクに水が入ってくると、それだけで海が楽しめなくなります。逆に、漏れないマスクを手に入れた人は、水中で急に余裕が出ます。
スカートの色、ブラックかクリアか
顔に当たるシリコン部分が黒いものと、透明・半透明のものがあります。
- ブラックスカート:外からの余計な光が入らないので、見ている方向のものがはっきり見える。写真を撮る人に好まれます
- クリアスカート:視界が明るく、横からの光も入るので開放感がある。狭いところが少し苦手な方や、初めての1枚に選ぶ方が多いです
どちらが正解ということはありません。実際にのぞいてみて、明るいほうが落ち着くか、締まって見えるほうが好きかで決めていいところです。
レンズの形と容積
1眼(レンズが1枚)と2眼(左右に分かれている)があります。2眼のほうが顔とレンズの距離を近くしやすく、容積(マスクの中の空気の量)が小さくなる傾向があります。容積が小さいと、マスクに入った水を出すときに吐く息が少なくて済みますし、潜行のときの耳抜きに合わせた調整もラクです。
視界の広さも見ておきたいポイントです。下方向が見えるマスクは、器材のゲージを確認するときや、砂地の小さな生き物を探すときに効いてきます。
度付きレンズという選択肢
普段めがねやコンタクトを使っている方には、度付きレンズが入れられるマスクという選択肢があります。海の中でピントが合うようになると、見える世界が本当に変わります。ウミウシのような小さな生き物を探すのが、急に楽しくなる方も多いです。
コンタクトのまま潜っている方も実際にたくさんいらっしゃいますが、マスクに水が入ったときに気を使うのは確かです。何本か潜ってみて「これは長く続けそうだ」と思ったら、検討してみる価値はあります。
スノーケルは水面移動で効く道具
スノーケルは地味な器材です。ダイビング中はずっと使わないまま、マスクのストラップにぶら下がっているだけの時間がほとんどです。
それでも僕がスノーケルをすすめるのは、水面で使うからです。ビーチからエントリーして沖のポイントまで水面を移動するとき、スノーケルがあれば顔を水につけたまま、タンクの空気を使わずに呼吸しながら泳げます。波がある日ほど、この差が効きます。水面で息を確保できるというのは、そのまま安心につながります。

選ぶときに見るのは、くわえ心地(マウスピースの大きさが口に合うか)と、マスクへの取り付けやすさ、それから水が入りにくい形かどうか。上部にカバーがついて水しぶきが入りにくいタイプや、下部に排水弁がついていて水を出しやすいタイプもあります。
やわらかく折りたためるタイプは、ダイビング中に邪魔になりにくく、BCDのポケットにしまえるのが利点です。スノーケリングも一緒に楽しみたいなら、しっかりした形のものが呼吸しやすくて向いています。三浦ではスノーケリングも開催しているので、両方を楽しむ前提で1本選ぶのもいい考え方です。
器材を選ぶ時間は、次に潜る日の先取り
器材選びの相談をしていて、いつも思うことがあります。自分の器材を選ぶ時間は、次に潜る日を先取りしている時間なんです。
このマスクで海をのぞいたらどう見えるだろう。旦那さんとおそろいにするか、あえて別の色にするか。次はどこの海に持っていこうか。選んでいる間じゅう、まだ来ていない海の話をしています。今日みたいに潜れなかった日でも、その時間があると不思議と前を向けます。
そして、道具が少しずつ自分のものになっていくと、海に行くこと自体が楽しみになります。ダイブコンピューターがあるから、自分の潜りを自分で振り返れる。自分のマスクがあるから、水中で余計なことを考えずに済む。ひとつ増えるたびに、海の中での自由が少しずつ広がっていく感じです。
急ぐ必要はまったくありません。レンタルで潜り続けるのも立派な楽しみ方ですし、実際そうしている方もたくさんいらっしゃいます。ただ、「そろそろ自分のが欲しいかも」と思ったときの、あの相談の時間はぜひ味わってほしいと思っています。
器材選びのご相談はいつでも受け付けています。何を買うべきか決めてから来なくて大丈夫で、何本か潜ってから「どれがいいですかね」と聞いていただくのが、いちばん失敗のない順番です。選び方とメーカー希望小売価格の目安は「ダイビング器材の選び方と相談」のページにまとめました。
Lさんの器材選びは、まだ始まったばかりです。次はAOW講習の海で、新しいマスクを着けた姿を見られるのを楽しみにしています。